学級通信のメリット・デメリットの解決策

 ―『学級通信は、出さなくていいんですか?』

これは、私が教員になって初めてした質問だったと記憶している。

社会人1年目=教員1年目。初めて赴任した小学校。右も左もわからない。

主任からの返答は、

 

「私は出せないな。」

だった。

 

 「私は出したいのですが、いいですか。」という意図で質問したのだけれど、私は出せないという返事に、上手く意図が伝わっていないのかな。と思いながらも、次の瞬間には別の仕事が降りかかっていた。

 この時の私は何もわかってはいなかったのだ。本当に何も。

 

学級通信のメリット

  1. 学級経営の柱となり得る
  2. 保護者からの信頼を得ることができる
  3. 教員間での情報共有になる
  4. 自己の教育理念を再考できる

学級通信のデメリット

  1.  手間がかかる
  2. 個人情報・要配慮児童に注意が必要

 

 ―『私も出した方がいいのはわかっているけど、他の主任さんが出していないから出さないで。』

 クラスによって差が出てしまう。あのクラスは出しているのに、あのクラスは出していない。そういったところが合わせられないから出してはいけない。

 後日、主任から聞いた、「出せない理由」だった。

 

 

 

解説

メリット①学級経営の柱となり得る

 私は学級経営の一つの柱に学級通信を置いている。学級通信の名前も、毎号の題字も子供たちが書いて(描いて)いる。輪番制で、一人一回以上は書けるように計画する。すると大体、少なくとも30~40号発刊することになる。一週間に約1号程度。私はそれ以上増やすと負担になると考えているので、増やさない。

 学級通信の第一号は、学級通信に名前はない。そこで、子供たちから募集する。配られたその場で考える子もいれば、家で保護者と一緒に考えてきてくれる子もいる。第二号には選ばれた子の名前と題字とともに名前のついた学級通信が配られる。

 作った学級通信はファイルに綴じてあり、その裏表紙には名簿が貼りついている。その名簿に「名前が載った回数」、「重みを◎○△などで表したもの(これがけっこう大事)」「題字を書く順番」をメモしておく。一年間でまんべんなく名前が載るように配慮する。

 記事の中身に関しては担任が書きたいことを書きたいように書けばいいと思っている。名言を引用して来たり、担任が大事にしていることを書いたり、時に担任の自分語りをしたり、学級でのエピソードを載せたりしている。書くことがないときは、「学習の様子」ということで、子供たちが学習に取り組む姿を写真で撮って、この学習をしています。とだけ書いている。内容に関してはこのブログで少しずつ公開できればと考えている。

メリット②保護者からの信頼を得ることができる

 保護者は、学校での出来事を知ることが、子供の口を通して聞くことしかできない。また、担任の思いを授業参観・懇談会でしか見ることができない。

 子供たちの口から伝わる情報は子供なりに脚色が入る。これは先生なら誰でも一度は経験があるだろう。

 授業参観や懇談会は年に数回しかないし、授業参観に至っては保護者は自分の子供しか見ていない。自分の子:先生の授業の比は9:1ぐらいだろう。懇談会も資料を読めばわかるもの以外はそこまで聞いていない印象。それよりよっぽど学級の雰囲気が気になるところだと思う。

 そこで定期的に学級での子供たちの成長や、様子を伝えておくと安心して学校に預けてもらえる。安心して預けられれば担任を信頼して、ほとんどのトラブルは穏便に済む。関係のこじれから大きなトラブルに発展し、十分な理解を得られず、子供のためにもならないし、教員の多忙度はぐっと増す。負のスパイラルになりがちになる。学級通信は予防線でもあるといえる。「学級通信を出す手間<大きなトラブルを解決する手間」と考えれば学級通信の意義が大きいと言える。

メリット③教員間での情報共有になる

 今の学校では学級通信は簡単に出すことは難しい。管理職に内容を確認してもらい、了承を得て発行する学校がほとんどだろう。これを逆手にとれば、管理職に学級の雰囲気を知らせることができると考えられる。管理職に担任の思いを知ってもらい、全面的にバックアップしてもらえれば教育の効果は大きくなるだろう。また、管理職との雑談のネタにもなって良好な職員室での関係を築きやすい。

 さらに、私は積極的に学年内や他の学年の先生方にも学級通信を配布する。そこでアドバイスをもらったり、思いを知ってもらったり、雑談のネタにしたり、中にはその思いに感化されて学級通信を出していない先生方からも「出してみようかな」と言ってもらえたり、出している学級通信をもらえたりする。さらに内容にも磨きがかかってよい循環ができる。

メリット④自己の教育理念を再考できる

 これはメリット③にもつながる部分があるが、漠然と頭の中にある教育理念を文章にすることで、「やっぱりこうだ」「なんかちがう」と感じて、軌道を修正したり、さらに深化させることができると考えられる。ネタ切れを起こした時(笑)などに過去の学級通信を眺めることがある。そうすると忘れていた気持ちや思いが蘇り、クラスでの声掛けも、先生の話などのネタも広がる部分は大きいと思う。この職業は子供たちは変われど繰り返しになる部分も多く、「あれ、これ伝えていなかったな」と思い出すこともできる。過去のクラスの子の名前を見て、「あの子頑張っているかな・・・」と過去に浸って、「よし、自分も」と立ち直れたことも何度もある。

 

 

 

―『出せない理由がそれなら、出す理由を探します。』

 主任にそう言って、隣のクラスの分の学級通信も書いていたことがある。そろえることが理由で出せないなら、そろえた上で絶対出してやる。もはや意地で隣のクラスの分を書きつつ、その勤務校で何年か務めたのちには、ほとんどの先生が出せるようになっていた。幸運にも、「私も若いころはたくさん出していたよ。出すことに賛成だ。」と管理職が後押ししてくれたのもあるが、少しずつ学級通信出す意義を認めてもらえたようで嬉しかったのを覚えている。

 

 

 

解説

デメリット①手間がかかる

 プラスアルファの仕事なのでどうしても後回しになったり、手間になってしまうことがデメリットとして挙げられる。でも私は、先述したように、学級通信を出す手間より、信頼を得られず大きなトラブルに発展し、それを解決する手間の方が大きいと思っている。「不定期でもいいや」という気持ちで少しずつ始めて、軌道に乗ったら一週間に一度という程度で書けるといいと思う。中には一日一通、二日に一通などの猛者がいるが、私の体感的には一週間に一度がベストだと思っている。なぜなら保護者もそこまで暇じゃないこと、一週間に一度だと子供が楽しみに待っていてくれることが理由だ。あまり気負いせず、マイペースに、どうせそんなに読んでいないでしょうぐらいの気持ちで出せると良い。

デメリット②個人情報・要配慮児童に注意が必要

 家庭の環境や、家庭の事情によって名前を載せたり、写真に写すことには厳重に注意しなければいけない。これは、かえって大きなトラブルや事故を招くことになるので、年度当初や学級懇談会等で確認をすること。

 

 

 

まとめ 学級通信を出す意義は大きい

 いかがだっただろうか。だいぶ独断と偏見、内容に偏りが出てしまったが、この記事を読んで、今出していない先生方が少しでも学級通信を出してみようかなと考えてくれれば幸いである。

 最終ゴールは子供たちの健やかな成長と、笑顔のために。